コラム
第9回 うつりゆくもの(4)~気圧と痛み
天気が悪くなると古傷が痛むという話を聞いたことがある方は少なくないと思います。「お天気痛」と通称されている現象は、ペインクリニックに限らず、リウマチ科医師や、歯周病治療をしている歯科医からも詳細な報告がなされています。
「お天気痛」と言っても気圧、気温、湿度、風速などいろいろな要素が複雑に絡みあっています。300人を超すリウマチ患者の28カ所の関節について、腫れと圧痛、及び気圧を数年間にわたって調査した研究(PLoS One. 2014 Jan 15; 9(1) : e85376.)によると、気圧が下がると腫れ、それは患者自身の痛みとも一致しました。さらに気圧が最低となる3日前に腫れと気圧の相関性が最大となります。圧痛もほぼ同様な傾向です。この研究では湿度との相関性も調べていて湿度が下がると腫れるようです。逆の傾向を示す報告もあり湿度との相関性はより複雑だと思われます。
これらの研究で気圧・湿度は地域共通の気象情報を使っていて、患者の住まいの標高を考慮した気圧、風速、室内湿度を個々に計測しているわけではありません。しかし昨今のIoT技術の進歩により、今や24時間365日、複数のセンサーにより取得したデータを収集する環境が整ってきているので、一人一人の住環境での気圧、風速、湿度などの計測と臨床的知見を統合することが可能です。これにより「お天気痛」のメカニズムが解明され、よりよいペインコントロールが可能になることが期待されます。