コラム
第7回 うつりゆくもの(2)~気温とエクセルギー
気象庁が最高気温35度を越える日を猛暑日と呼び始めたのは2007年のことでしたが、猛暑日では足らず40度を越える酷暑日も登場、昨年8月熱中症による搬送は全国で91,467人にのぼりました。人間は120ワットの発熱体ですから熱を体外に放出し、コア温度37度を維持しないと生きてゆけません。エアコンで室温を下げるのが手っ取り早いのですが、つい温度を下げ過ぎ、冷房病に悩まれることになります。
室温を下げ過ぎるよりも、天井や壁面の温度を室温よりやや低くすることで効率よく放熱が行われることは意外に知られていません。体表面から温度の低い壁面に放射によって熱が効率よく移動するからで、夏場、洞穴や滝つぼの傍が快適なのはこのためです。建築環境における放射温度制御の有効性を実証したのはエクセルギー研究の成果の一つでしょう。
冷房病とは別に、冬場は温風による乾燥肌のトラブルが話題になります。これを避けるために床暖房が普及してきました。さらにオフィス、ホテル、病院、体育館などで建物全体に輻射式冷暖房を設置した事例も報道されています。北海道札幌市にある円山動物園ではオランウータンの飼育室を輻射式に変えることで、動物の毛並みがよくなり、ストレスが減ったとのことです。オランウータンもエアコンの温風は苦手とみえます。