コラム
第2回 みる
15世紀末に活版印刷技術が普及し知識が本を通して広がった結果「書き言葉」が優位の社会が出現しました。現代はインターネット/デジタル技術によって画像情報が優勢な社会になっています。インスタグラムが好まれるように直観的理解の時代ともいえます。
霊長類は、木から木へ移動して果実や昆虫を採取していたので、手と目の協働が進化しました。森林が霊長類を育んだわけです。ヒトは森林からサバンナに出て両手が自由になり、視覚との協働で道具、そして道具をつくる道具を発明してきました。精密な観察とならび、ボ~と全体を捉える見方も大切です。東洋医学には「望見」という診たてがあり、人の姿全体から受ける第一印象を重んじます。
精密機器工場の生産ラインの最後の段階では見逃し率0%が求められますが、今でも目視による全品検査が行われています。この検査法として佐々木章夫氏が開発した周辺視目視検査があります。目の視野中心は解像度が高く精密に見ることが可能ですが、視野が狭いうえ、疲労しやすいのが課題です。これに対し周辺部は動きに敏感で、薄暗いところでも動きを察知できます。暗い照明下で感度がよいのは中心視と対照的です。検査部品を並べた治具を両手でリズミカル動かしながら、表面の瑕疵を見るのではなく感ずるこの方法は、肩こり、腰痛にもならず見逃し率も低いことが明らかになっています(感察工学研究会)。